- ジオメディアサミットに参加してきました。イベントの趣旨が、「ジオメディアを盛り上げたい様々な立場の人達を集め、各社の取り組みを発表すると共に、今後ジオメディアを盛り上げる為にはどのような活動が必要かを考え、交流する場を作る」とのことで、プレゼンテーションでも、Googleの河合敬一さんらやYahoo!の佐藤伸介さんなど、それぞれの地図や地域情報サービスを手掛けておられるキーメンバーの方々が登壇されていました。そのほか、ソニーCSL時代より交流のあるリクルートメディアテクノロジーラボの船見さん他、個別にはお会いしているものの、公の場で一緒に語らうという非常に楽しい機会となったし、懇親会では、参加者の皆さんそれぞれがユニークな背景を持ち、ジオメディアやその周辺領域に関してとても熱い想いを持って、日々の業務や研究をされているのを改めて感じました。
写真は、リクルートMTLの寺井さん。WiiリモコンをプレゼンテーションPCと接続し、赤外線センサとして利用。ライターの火をポッとかざすと、ほのかに周囲が地図表示に!?まさにライトニングトークでした^^)
イベント運営にかかわられた方々、おつかれさまでした。また、今後の発展を期待しつつ、私自身も今後とも微力ながら貢献していきたいと思っています。
写真にも映っている運営委員の1人のシリウステクノロジーズの関さんのエントリーからいろいろな関連情報がリストされているのでご興味ある方はどうぞ。(CNET記事はこちら)
さて、イベントのお題が「ジオメディアの未来について考える」とのことで、私は、最近取り組んでいる場所・空間に連動した情報配信サービス「ロケーション・アンプ」のコンセプトとその具現化事例を紹介しましたので、その内容と最近考えていることをつらつらと。
ロケーション・アンプの特徴:
– 場所や空間に連動した情報配信
– その場特有のインタラクション
– Location Amplifier(場所・空間の増幅器)
場所・空間の情報を「アンプする」(拡張・増幅する)というコンセプトですから、Where2.0で発表したような列車内という空間であれば列車内特有の、ヨドバシカメラのような建物内(※1)に入れば建物内特有の、そして横浜のような観光都市の街歩きには街歩きの「アンプ」の仕方があると思うのです。地図上にPOI情報を表示する情報表現とインタラクションだけではなく、そして、ユーザー側がコンピュータデバイスやその制約に合わせるのではなく、どこまでコンピュータがユーザーのリアルなライフスタイルに合わせられるか、そこが心地よく拡張された現実感につながるのではないかと思うのです。
「ロケーション・アンプ for 山手線」イメージ
作者: IAMAS 赤松正行 & Koozyt, Inc.
これは、とてもチャレンジングな領域です。なにせ、1つ1つアプリケーションを丁寧に作っていくのか?いけるのか?という問題もありますし、「アンプする」ためには、増幅する元となる情報コンテンツが継続的に生まれないと成り立たない。そして、扱う対象の場所や空間がローカルになればなるほど、利用するユーザーも限定され、それは事業として成り立つのかというお題もあります。どこか一社で完結するようなシステムではなく、場とメディアとコンテンツとユーザーが一体となったエコシステムにならないとまわらないビジネスモデルだと思うのです。
しかしながら、この領域は、常々チャレンジしたいと考えていた領域です。
ちょうど2002年ごろ、未来パソコンのコンセプト作りを担当していた際、ユーザーの位置や時間などに応じて,好みの情報を提供するようなパートナー的な機器という位置付けで「センシングコンピュータ VAIO E.Q」というコンセプト展示をしました。リンク先の写真を見てもらうと分かるとおり、6角形のパソコンです。当時、本人やプロジェクトメンバー的には、五感を拡張するという意味での第六感から6角形に模しただけで、ここには、未来のパソコンやカメラ、音楽プレーヤー、携帯ゲーム機や携帯電話が入るというくらいの意味合いだったのですが、「本当に6角形のパソコン作るの?」とか「6角形の液晶なんかないよ」とよく言われ、FAQも作ったほどでした(笑)
さて、いまや技術の進歩が進み、各種ワイアレスブロードバンドのインフラが整備され、手のひらに乗るモバイルCE機器、しかもオープンな開発環境の携帯端末も出そろいつつあります。それらには、10年前のノートパソコン相当以上のCPU性能が搭載されており、GPSやPlaceEngineなどの位置情報取得や画像処理による各種センシング技術もより身近になり、実際の商品にも応用されてきました。
そんな時代背景の中、まさにリアルな場所や空間での試行錯誤を繰り返して、ノウハウを貯めたいと考えていた矢先に、アッカ・ネットワークスの林さんらが推進する skeletown への参画のお話が具現化し、「ロケーション・アンプ for 横浜」のアプリケーションサービスにつながりました。
「ロケーション・アンプ for 横浜」イメージ
「skeletown」は、横浜市のベイエリアで開始した無線LANの試験サービスですが、特徴の1つに「位置情報のインターネットサービスを配信する事業者にAPの位置情報を提供し、位置情報と連動したサービスの開発を進める」とあります。今回の「ロケーション・アンプ for 横浜」では、アッカ・ネットワークスが提供するAP位置情報を利用し、まずは、その位置測位粒度で、どの程度の場所・空間の連動感(※2)を得られるか確認していきたいと考えています。横浜という観光都市、そして、skeletownの街ナビのコンセプトに合わせて、端末画面に没入するのではなく、場所を実際に移動しながら掌の中の端末画面に連動した情報が降ってくる、湧いてくる、染み出してくる…そんな空間の拡張感覚を一部でも実現できればと考えて開発しました。
無線LANインフラの上に、最初のコンテンツとしては、ヨコハマ経済新聞からは地域イベント情報などやオプトからは周辺広告情報などを提供していただき、リアルな場に連動した位置情報サービスのビジネスモデルとして、そして地域活性化の仕組み作りとしても、うまくまわるのか含めたチャレンジとなっています。
さて、私自身も実際に体感してみて、感じたこともいろいろあります。
人々が雑多であふれかえる中華街と、ゆったり周辺の街並を楽しみながら散策する馬車道周辺と、ショッピングを楽しむ元町とでは、自動的にその場その場で異なった写真や情報が集まってくることで、街の色がそれぞれ特徴的であることを実感し、馴染みのない場所を概観するには、現在位置に連動した情報配信のコンセプトは非常にマッチしているということ。
しかしながら、欲は出てくるもので、場所だけでなく、誰といるか、時間や天気、人の流れや混雑度によって、そのときの自分の気分も変わるし、自分が見つけたい、自分に届けて欲しいと思う情報は様々だということもあらためて感じました。
今後、その場特有の、そして、そこに訪れる人々が特有に持っている(アンプするための)「指向性アンテナ」いうメタファーをどう実現できるか、そこがカギになってくると思っています。いわゆるパーソナライゼーションとか、リコメンデーションと呼ばれている領域でしょうか。ランチや夕食時のがやがやした中華街では、街のふとした発見などを求めるよりも、やはり、まずはおすすめグルメ情報が欲しいし、そこにささっと案内してほしいと思います。
ただ、この手の話題を考えるとき、すべてが技術で解決するとは経験上想定していなく、ソニーCSL時代、脳科学者の茂木さんやPlaceEngine生みの親の暦本さんらがオフサイト合宿などでしきりに語っていた言葉を思い出しています。
「身体性の制約を持って発達してきた人間の脳とその制約をもたないコンピュータの知能(たとえば集合知の例)とは全く違う。」
(中略)
「人間の脳の創造性をなめちゃだめよ。」
(中略)
「脳は偶有性を喜ぶのだ!」
#オフサイト合宿では、それぞれ専門領域の話で内容が難しいので、興味あるキーワードだけ覚えてます(笑)
私流に解釈すると、すなわちコンピュータができることは、まだまだたかがしれてるけど、場所や空間における演出とあわせて仕込むことで、人間の脳の補完性、創造性を引き出すことができる上手いバランスとシステムデザインがあるのではないか、そのような方向性がリアルを拡張する新しいライフスタイルにつながっていくのではないかと最近考えています。
※1 ヨドバシカメラの事例は、7/18に「WilressGate Connection for Mac OS X」という接続ソフトの商品発表会が秋葉原のヨドバシカメラ マルチメディア akibaであり、トリプレットゲートの池田社長とともに、はじめて秋葉原で街頭演説?を体験したのですが、そこで「ロケーション・アンプ」のコンセプトをヨドバシマルチメディア館に当てはめた場合のコンセプトと開発イメージを紹介しました。
※2「ロケーション・アンプ for 横浜」を知り合いや、位置情報関連の集まりにおいては、紹介させてもらっているのですが、お恥ずかしながら、サービス開始早々に、位置連動機能に、いくつか不備があり、現在は修正してありますので、あらためて横浜に行かれる際には、ぜひご体感くださいませ。