塩野崎です。
今年度ももう最後!! そして、今年度関わりさせて頂いた国プロ、G空間シティ事業:
「被災に伴い制限された通信環境下における、地下空間を含む情報伝達・避難誘導支援の実現」も
もうすぐ完了となるはず。
この事業のプロジェクトリーダーは、立命館大学の西尾先生です。
西尾先生とは、先生が慶應SFCにいらっしゃった(20年近く前?)ときからのお付き合いで、今まで東京国立博物館のトーハクなびでも導入されている PlaceSticker で若干ご一緒しましたが、今回のG空間PJにお誘い頂き、本格的に共にお仕事させて頂くことになりました。クウジットはこの事業で提案している防災プラットフォームシステムの設計と開発マネージメントを担当しました。
最近のG空間EXPOではいろいろ関わっておりましたが、G空間系の国プロは、実に4年ぶり。過去のG空間の国プロについても後で振り返りしますが、まずは、今年度のPJについて紹介致します。
今回の事業では防災というテーマでいろいろな条件下を想定した環境に耐えられる防災プラットフォームを目指すということで、防災避難訓練の実証実験も、東京、名古屋、大阪の3地区で行われました。東京では東京メトロ二重橋前駅で駅員さんが避難誘導員ということで実証実験を行いました。名古屋ではセントラルパークという地下商店街、大阪は梅田地下街のホワイティ梅田で実証実験を行いました。
防災プラットフォームのシステム構成を上の図に示します。詳細についてはプレスリリースにも記載されておりますが、防災センターで利用するアプリ、現場職員が携帯し、避難誘導を行う職員専用 BtoBアプリ、一般ユーザが平常時に利用する商業施設 BtoCアプリと、これらと連携する防災管理サーバを開発し、防災訓練の場で実証実験を行いました。
プロジェクトでは、平常時アプリは、大阪用のうめちかマップと名古屋用のセンパナビが独立して開発されました(App Store でも公開中)。
日常的にはこれらのアプリを使いながらショッピングを楽しむ(クーポン、イベント、スタンプラリーなど)ことができ、災害時には災害モードへと移行し、施設内の災害情報も受信することができます。通常は施設特有のアプリとして機能するのですが、災害時には統一的な災害情報源となる防災プラットフォームと連携することができます。
センパナビとうめちかマップ
屋内測位基盤と連動し、地下空間において、現在地をベースに災害発生場所から避難することができます。上記写真では、センパナビでは iBeacon で測位して現在地が画面中央に表示されてます。うめ地下マップでは Wi-Fi/PDRなどのハイブリッド測位で現在地が表示されてます。
今回は屋内測位基盤とは活用できるものは何でも!という感じで、Wi-Fi、BLE、IMES が全て入っている全部入り測位ボックスが開発されました。しかもそれを限りなく誘導灯と合体させたものも梅田地下街には導入されてます。また、各地域のWi-Fiの電波も事前サーベイした情報、歩行空間ネットワークの情報、スマホのセンサーによる Pedestrian Dead Reckoning (PDR) も全て統合された立命館大学の cross assistive 測位や、日立さんの IMES/PDR ハイブリッド測位という複数の手法も導入し、動的に切り替え実験しました。
左の写真は、誘導灯の取り付け器具と一体化された測位ボックスです。右の写真中央はそのまま天井に設置された測位ボックスです。両方共梅田地下街で今も動いてます。
最初の実証実験は2月に二重橋前駅で行いました。丸の内エリアの方々にも避難者として参加頂きました。
実証実験前に被験者にアプリの説明をする塩野崎
二重橋前駅では電池駆動の測位ボックスを設置しました。左の写真は、コードネーム: バス停と呼ばれた測位ボックス(下部はバッテリー収納ボックス)です。右の写真はホームに取り付けられた測位ボックスです。
二重橋前駅実証実験にて。駅構内秘密基地を仮防災センターとして災害情報を配信!
セントラルパークでは、一般の方々の防災訓練イベント、さらに従業員の方々の防災訓練イベントという2つの訓練で今回開発したシステムは導入されました。
左の写真は、センパナビのスタンプラリークリア画面(平常時利用)です。一般の方々はまずスタンプラリーを楽しみながら動いて頂いておりました。その際に訓練の災害が発生するというシナリオです。右は災害モード移行後、防災プラットフォームと連携し表示される災害情報の画面です。
避難誘導員(セントラルパークの場合は店員さん)はBtoBアプリをもって避難誘導をされてました。上の写真では火災発生をシミュレート(訓練なので実際は発生してません)し、実際の現場で撮った写真です。
最後の実証実験は、梅田地下街全体の防災訓練の一環で、今回のシステムが利用されました。
梅田地下街防災訓練の様子です。左写真の中央看板の裏にこっそり塩野崎がおります。地下街防災訓練の災害情報を館内放送しているデスクのとなりに陣取って防災プラットフォームでも同期して災害情報をスマホに配信しました。右は災害モード移行後の災害情報タイムライン表示です。かなり細かく避難できる出口を限定して実験を行い、避難者が避難できるかどうかを評価しました。
全部入り測位ボックスには Wi-Fiのビーコンを発信する機能だけではなく、Wi-Fi信号も観測するという人流センサー機能も装備されております。クウジットでも開発している人流センサーも今回のプロジェクトで得た know how を活用し進化させたいと思ってます。
BtoBアプリの人流センサーのヒートマップ表示
上記図にはヒートマップ以外にも現場職員の位置情報も表示されております。現場でBtoBアプリを持ちながら避難誘導する現場職員は互いの位置を知ることができ、即座にメッセージングシステムを通じて連絡を取り合うこともできます。防災センターから指令を同システム経由で受けることもできます。
3月中旬には成果報告会などが行われました。下の写真は 3/20 に東京国際フォーラムで行われた「G空間×ICTの海外展開に向けた国際シンポジウム」でのプロジェクト紹介展示の様子です。
左の写真は無事終わってホッとしている西尾先生と私と測位ボックスが内蔵された誘導灯を写したものです。右の写真は、測位ボックスの上においてあるのは IMES受信機です。IMES受信機とスマホは bluetooth で接続し、測位ボックス(IMES送信機)から降ってくるIMESの情報、すなわち位置情報をアプリに伝え、現在地が表示されております。シンポジウム会場ですが、梅田地下街にいるかのようにみせてます。今回の実証実験では更に測位ボックスからIMESショートメッセージも送信しており、一部の災害情報を直接スマホアプリに配信しておりました。
なお、今年度のG空間の成果はWTP2015、LBJ2015、G空間EXPO などさまざまなイベントで発表される予定です。また2015年度の公募もでたようで、今年度の成果の応用・発展についても検討して行きたいと思っております。
ここからは過去を振り返る思い出話です。
クウジットも昔々、経産省時代から G空間に関わってきておりました。
2009年度に初めて取り組んだのが、新丸ビル周辺で展開したシームレス測位の実証実験です。当時は、実験プラットフォームとして iOS端末 (iPhone 3GS) を利用しており、屋内では PlaceEngine を利用し(この時はまだ PlaceEngine が動いてました)、PlaceEngineで測位できないときは CoreLocation (主にGPS)を利用しました。IMESの実証実験も同じ場所で行われましたが、別の端末を利用しなくていけなく、独立した実験になってしまいました。
無線LANアクセスポイントを80台、行幸通り、新丸ビル駅前広場に設置し、分かりにくい新丸ビルの地下入り口を案内するというシステムでした。
iOSで昔 PlaceEngine が動いていたときのG空間アプリの珍しいスクリーンショット
2010年度は、夏に当時はパシフィコ横浜で開催されていた G空間EXPOに、PlaceEngine の測位インフラを構築し、クウジットでは AR と屋内ナビゲーションを組み合わせたガイドの実証実験を行いました。
上のスクリーンショットははG空間EXPO会場のブースをナビゲーション案内画面 (目的地に着くとARで詳細を見るというシナリオでした)です。
マピオンさんやインディゴさんにも PlaceEngine測位インフラを活用して頂き会場で実験を行っていただきました。
2010年度末においては、ARと組み合わせたガイドシステムをさらに進化させ、吹き抜けが激しいクィーンズスクエアでフロア判定の精度が維持できるよう調整した PlaceEngine測位インフラを提供して実証実験を行いました(吹き抜けでのフロア判定はドキドキものでしたが、実現できました)。
店舗通路にある電源がとれるライティングレールにアクセスポイントを自由に設置できてインフラ構築が柔軟にできた一方、通路に設置したアクセスポイントがいつの間にかなくなっているという事件もございました。
お店まで屋内測位を使ってナビゲーションし、店舗内ではARを使って商品を紹介するというシナリオでした。下にアプリのスクリーンショットをまとめました。
2010年度の報告会は当時機械振興会館にオフィスがあった JIPDECさんの会議室で行っておりましたが、会議中に大きな揺れが発生。そうなのです、3/11 だったのです。あれから4年後、またG空間と再会し、今度は防災というキーワードで結ばれることになりました。
来年度ももっともっとG空間シティに貢献できればと思っております!
防災、2020年、いろいろありますが、G空間の成果もクウジットが取り組むまちづくりで活かしますので、乞うご期待!
引き続きよろしくお願いします。
regards,
shio