Wi-Fiで人流は見えるか?

こんにちは、塩野崎です。
CTO200

先々週のブログにはビーコン、無線LAN測位に加えて、G空間シティ構築事業の人流センサーについてちょっと述べました。実はクウジットでも人流センサーを仕込んでいたりします。

ちょっと前ですが、9月の連休、二子玉川駅前で、Velo Tokyo 2014 というイベントが開催されました。
ここでクウジットが仕込んでいるモニターノードという人流センシングするための無線LAN電波を記録する装置をモバイルバッテリー駆動で3拠点に設置し、実証実験をおこなって見ました。二日間のイベントだったので、そのままバッテリーで連続稼働できました。

先日のライブヒートマップでも利用しておりましたが、無線LAN端末は通信をする前の段階から probe という信号をときどき送出しております。どのようなタイミングで送出されているかどうかは端末の種類、状態によって異なりますが、ヒートマップが人の混雑度の目安を表すように、この電波を複数箇所で観測することによって人の流れも見えてくるかも!

よく講演で使う資料なのですが、例えば、下記のように駅の改札、そして駅の出口にモニターノードをおけば、通行人の絶対数はカウントは難しいかもしれませんが(みんながスマホをもってないかも。わしみたいのは複数もっているかも)、人流の割合の目安になります。

スクリーンショット 2014-11-26 19.44.46

駅前広場にモニターノードを下記のように配置しました。イベントの邪魔にならない程度で、駅側、イベント会場(センター)、バス停側、計3箇所に設置しました。モニターノードで観測された無線LANのデータはフラッシュメモリに記録され、イベント終了後回収し、解析のためにDB化しております。

graph

まずは基本的なデータから。今回モニターノードで設置した期間中 (9/14 9:00 〜 9/15 17:00の間) 観測されたユニーク無線LAN端末数は、43,896でした。夜中などイベント時間外に観測された端末数も含まれておりますが、かなり少数で誤差となります。また、実際にイベントに参加された方々の人数はまだ把握できていないのですが、今後比較できればと思っております。このユニークカウントを時間別にプロットしたグラフを下記に示します。

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赤のグラフは 9/14 のカウントです。青のグラフは 9/15 のプロットとなります。
イベントは 9:00 〜 17:00 の間の開催でした。イベント時間帯外にも観測された端末数特に初日は夜中も設置したままなので見えてしまってます。このグラフによると朝からユニーク数は増えて正午から16時当たりまでかなり多くの来場者が観測されており、15時16時辺りがそのピークで、18時までもかなりの数になっております。この結果を踏まえると 17:00にイベントを終了するのはちょっと惜しかったかなと思ってしまいます。この場所・時期においては連休時の来場者は午後から夕方にかけて多く観測されることが今回の実験結果より推定できます(イベント終了間際に人が集まってきたということも考えられます)。通常の週末、平日の傾向と照らしあわせたいところです。

先に述べたように無線LANの信号は断続的に観測されます。総ユニーク端末のうちには本当に一回しか信号が観測されていない端末もございます。イベント会場を早歩きで通り過ぎた来場者の端末だったりするかもしません。そこで、会場内に居座って頂いて「滞在」してくれたユーザに注目して解析しました。無線LANの信号が連続して数回見れて、その間隔が10分以内であれば、最初に観測された時間と最後に観測された時間の間を一つの滞在と見なします。ある端末がエリアに長期滞在していた場合は、一つ一つの滞在を合計し、総滞在時間とします。単発で電波が観測された場合、それは滞在と見なしません。また10分以上の間隔で単発の電波が観測されても滞在と見なしません。さきほど、43,896 のユニーク端末数が観測されたと書きましたが、そのうち滞在した端末は、26,114でした。イベント会場の近辺にいらっしゃったお客様うち、実に約59%が足をとめたということがわかります。

次に下記グラフは各端末の総滞在時間を計算し、一時間単位でそのユニーク数を表したものです。

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この結果から明らかですが、滞在が観測された端末のうち 96%は1時間以内の総滞在時間でした。1時間以上、2時間未満においても 686 の端末が滞在していたという結果になりました。総滞在時間が長いものもいくつか観測されました。これらはイベントのアルバイト、周辺で勤務する方々、巡回しているガードマンの方々かもしれません!次に1時間以内の総滞在時間を10分単位にブレイクダウンしたグラフを示します。

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滞在が観測された端末のうち、70%は10分以内の総滞在時間でした。40分まで 1000オーダーの端末数の滞在があり、22% は 10〜30分間滞在していたことも分かります。

さて、ここまでは基本的なデータですが、一歩突っ込んで解析すると人流は見えてくるのか?

まずは来場者がこのイベント会場にどこから入ってきたかという「入」の情報を集計してみました。結果を下記のグラフに示します。

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イベントエリアに滞在した来場者の半数(51%)は東急二子玉川駅側方面で最初に観測されたことが分かりました。逆にバス停側で最初に観測された割合は 12%!!
イベント会場への来場の多くは駅から流れているので今回は交通手段としてはバスよりも電車の利用のほうが多かったと推測できます。また最初に観測されたポイントがセンターの割合も多く見えました。早足で「駅側」「バス側」を通過してしまい、センターで観測されたと思われます。今回のイベントではセンターにステージが設けられその付近にテーブルと観客席が設置されておりました。そこで一旦休憩した際にスマホなどの電波が観測されたのかもしれません。もちろん、イベント会場に対する入り口が「駅側」「バス側」とは別途存在していることも有りえます。

イベントエリアには多くの来場者が駅側から入ってきましたが、その後どこに滞在していたか、さらに最終的にはどこに流れていったか(出)についても解析してみました。
まずは、1時間〜2時間の総滞在時間が見えたデータに注目し、その内最初に観測されたエリア(入)が駅側の来場者が、その後、どの辺りに滞在していたかの割合と、最後に観測されたエリアの割合を下記に示します。

1〜2時間の滞在

このケースにおいては、駅から流れてきた来場者のうちほとんど(79%)は、駅側(1)、センター(2)、バス停側(3)の全エリアで滞在が観測され、それ以外の20%は、駅側(1)とセンター(2)のみでしか観測されなかったということになります。この20%の来場者は、駅側とセンターでしか観測されなかったということで、イベントに参加されていたかどうかを推定するのは難しいですが、エリアが限定的であり、さらに、全エリアで観測されたユーザが大半なので、全エリアで滞在していた 79% のユーザは、かなり高い確率でイベントで参加されていたと見なすことができます。また、滞在エリアが全エリア(1,2,3) の場合は、49%が駅側が最後に観測されたエリアで、滞在エリアが (1,2) の場合は 73%が駅側が最後に観測されたエリアでした。したがって、滞在エリアが全エリア(1,2,3)でも、(1,2)であっても、ほとんどのユーザは、駅側に流れ出ていると推測できます。駅から来た人は駅に戻っているということでしょう!

同様の調査を他の総滞在時間のグループにも行いました。10分〜20分の総滞在のユーザの結果を下記に示します。

10〜20分の滞在

結果は、1時間〜2時間のユーザと同傾向で、大半(55%)のユーザは全エリア(1,2,3)に渡り滞在が観測され、さらにそのほとんど(39%)が最後駅側に流れて行ったということなりました。実は、10分より長い滞在の場合、全て同じ結果となりました。しかし、10分以下の場合、記のような結果となり、10分より長い滞在とは全く異なる傾向となりました。

10分以下の滞在

全エリアの滞在(1,2,3)が 18% しかなく、逆に、駅側・センター(1,2)エリア滞在と駅側(1)のみの滞在を合計すると、79% の割合を占めます。
全エリアの滞在(1,2,3)において最後に観測された場所は、3つともほぼ同じになっており、全エリアに渡って観測されても、イベントに参加しているような流れ(駅からきて駅に戻った)というよりは通りすぎている可能性が高いと思われます。

今までの結果は全て最初に観測されたエリアが駅側をベースに傾向をみましたが、実は最初に観測された地点が駅側でなくても同様な傾向が見えました。

結論としては今回のイベントに関しては、10分より長い滞在で、さらに全エリアに渡って滞在が観測された場合は、イベントに参加されたお客様であると推定できると思っております。10分より長く3時間以下の滞在で、全エリアで観測されたユニーク数は、5228でした。すなわち、滞在が観測れたユーザの20%はイベントに参加したと推定できます。またイベントに参加した方々の大半は駅側から到着して、駅側に帰ったという人流も見えました。当たり前の結果と言われれば、そうかもしれませんが、この二日間だけでもいろいろな傾向が見えました。データを連続してとり続け、平常時と比較することによってイベントの効果などを明示的に測定することができます。人流センサーのポテンシャルを感じます。しかも今回バッテリー運用で簡単にデータをとることができました。もっともっとデータをとってみたいですね。ただ、プライバシーを考慮した運用と解析は当然必須です。今回のように人流を測る場合、会場には改めて Wi-Fiを使った測定を行っていると提示する必要がございます。このイベントでは、会場に設置されたポスターで告知させて頂いておりました。またモニターノード自体無線LANの情報を記録する際にMACアドレスはスクランブルして記録しております。そのため、イベント当日に会場に出向かれた方の端末を特定できる情報は一切保存しておりませんのでご安心ください。

今後 Koozyt では様々なイベントや商業施設などで人流センサーの実験を行っていきたいと考えています。ご興味のある方はぜひご相談ください。

実施運営協力: CCN.,LLC

see you next time!

regards,
shio

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