前回エントリーからのつづきです。リアルとネットを行き来するような、さまざまなイベントを通して、位置情報サービスと地域情報活性化について考えるよい機会を得ましたので、ここでまとめて振り返って共有したいと思います。(今回は、その2回目)
■ おおがきビエンナーレ2008での体験
9/23には、IAMAS赤松さんから紹介いただいた平林さんの「CCCity Game」作品のワークショップを体験するべく、岐阜おおがきビエンナーレ(9/19-28開催)に参加してきました。
IAMAS 赤松さん(写真左)と同じくIAMAS平林さん(写真右)
「CCCity Game」とは、どのようなワークショップだったかを簡単に説明すると:
- 参加者(定員6名)は、専用のアプリケーション「CCCity Game」がインストールされた iPod touchが貸し出され、赤組、青組に分かれる。
- 参加者は、メッシュで定義された大垣の対象エリアを歩き回り、そのメッシュに対応した「問題」に正解することで陣取りゲームを行っていく。最終的に多くのメッシュを自分の組の色で塗りつぶした方が勝ち。
- 「問題」とは、メッシュ内(もしくは近傍)のどこかにある実際の風景と1か所異なるiPod touch上の(加工された)写真の間違いを探すことである。
※題名の「CCCity」の”CC”は、Creative Commonsからで、コンテンツ改変を場所に対する操作(すなわち、間違い探しの写真)と解釈してのコンセプトだそうです - Fonルーターが、イベントに参加している商店に設置されており、その場に行くと、持ち歩いている iPod touch がネット接続され、問題の答えを送信したり、新しい問題を更新することができる。
※現在位置近くの間違い探しの問題を出す際に、「PlaceEngine」が使われています
さて、文字で書くと何やら小難しいのですが、ビデオにしてみましたのでご覧下さい。
[youtube=fqYr-FNZbN4]
実際に私も体験するまでは「面白いのかな?90分も飽きないのかしら?」などと思っていたのですが、実際に参加するとその印象は大違い、誰よりも夢中でワークショップに楽しんで参加したのではないでしょうか?そして、ゲーム感覚のユーザー参加型の情報サービスが地域活性化に一役買うのではないかと常々考えていた私に、今後の企画を考える上で、ヒントのようなものを与えてくれました。
具体的には、さまざまな制約条件をうまくゲーム性に生かして、地元の人とのコミュニケーションやその土地の発見を誘因させることにつながっていくのではないか、少なくともユーザーとして参加してそのような可能性を感じることができたことです。
貸し出す機材は、iPod touchとネットインフラとしてFonルーターということで、なるだけ安価にインフラ構築という流れなのだと推測するのですが、普通に考えると、どこでもネットにつながらないから使えないじゃん。と机上では思うのですが、地域活性化という観点からは、実はその逆なのではないかとさえ感じてしまいました。というのも、大垣の対象エリア(大垣城を含んで、500m^2程度)の商店街にトータル7つのFonルーターが設置されており、画面上の略地図から探して歩き回ることとなるのですが、それらの場所を探すこと自身もゲーム性の一部になっているからです。実際に、Fonルーターの場所を探しまわるために、商店街を練り歩き、地元の人たちと会話を交わし(IAMASのイベントであることが分かっているので、双方気軽に話しかけられる)、そして実際に見つけたお店では、やはりお土産も買ってしまいました。(私の場合は、老舗のおせんべい屋さん)
私は、一気に得点を稼ごうとして、レンタル自転車を借りて、大垣の街を走りました。(自転車まで借りた人は初めてだ!とIAMASの人は言ってました^^)大垣を訪れたのは初めてだったのですが、知らない街を自転車で風をきって走るのは気持ちよいですね。川沿いを走っているうちに、なんだか子供のころの懐かしさを感じました。さまざまな軸で、その土地を訪れた人々に、非日常を体験して記憶してもらうことは、地域の再発見のみならず、「また来たい!」「人に伝えたい!」という欲求にもつながると思うのです。はじめて訪れた街で2は、やはり、名所・史跡、グルメ、お土産といった観光ガイドが基本の街歩きになるのでしょうが、今回のゲーム感覚の「風景の間違い探し」を通して得られた体験は、その街を知るきっかけとなるユニークな切り口であったと思います。
※こんな屋根つきのアーケード商店街でもPlaceEngineを利用して iPod touch上で位置を推定できます!
今後ますますリアル側の生活を豊かにするため、ネット側の情報やサービスがリデザインされていくと考えています。そして位置情報というのは、まさにリアル側の代表ですから、位置測位技術は何であれ(kokogikoさんがここにきれいにまとめてくれていますね)、気軽に日常生活に溶け込む形で使われていくと思います。地域活性化というお題の切り口で、場所・空間連動サービスのあり方を考えるとき、単に情報サービスの部分だけ切り取っては語れません。その場を活性化したいと願う人々の存在と、その場が持つ特色、それらを引き出すためのコンセプトというかストーリというか、より一歩つっこんだ情報デザインとインタラクションを考えていかなければいけないとひしひしと感じています。ここに如何にユニークな付加価値を載せられるかこそがチャレンジしがいのある、そしてチャレンジしてみたい領域でもあります。