塩野崎です。
クウジットでは、[空]と[実]をつなぐ空実コンサルタントとして、そして位置情報サービス研究機構 Lisraでは、理事の1人として活動しております。
先日 11/30 に広島で国際学会 MobiQuitous 2016 (13th Annual International Conference on Mobile and Ubiquitous Systems: Computing, Networking and Services) が開催されました。名古屋大学/Lisra 代表理事の河口先生 筆頭による、名古屋セントラルパーク O2Oデジタルマーケティング実証実験についての論文が採択され、河口先生が本学会にて発表を行いました。
本論文についてはこちらをご参照ください。
クウジットの飛鳥井、および私は、実証実験において、Wi-Fi電波による人流センサー「DF.sensor」を用いた計測と解析を担当しており、本論文において共著者として連名させていただいております。
本ブログにおいても、簡単にその内容について、ご紹介します。
2016年の2月、3月名古屋セントラルパーク地下街にて、Lisra 主催の O2Oデジタルマーケティング実証実験を行いました。これについては以前ブログでも紹介をさせて頂きました。
本実証実験においては、キャンペーン期間中の before/after で人の流れ、賑わいなどを測定することを目的に、スマホキャンペーンアプリの実験と連動して、地下街に 12台のDF.sensor も設置しました。
※ Wi-Fi電波による人流計測技術、およびDF.sensorについては、こちらをご覧ください。また、DF.sensor では一切 MACアドレスは記録しておりません。匿名の ID に変換して処理をしております。
さて、2015年の後半から、iOS端末の Wi-Fi制御信号の MACアドレスはランダマイズされるというプライバシーを配慮した施策が組み込まれました。長時間同じ場所に滞留していても、DF.sensor で検出する端末としては異なるものとなり、検出端末数が増加してしまいます。
IDのランダマイズ化により、滞留は人流の測定は困難になるのですが、ある場所の賑わい度合いにどの程度影響するのか?を今回セントラルパークで傾向を捉えることができました。
ある場所の賑わい度合い(ユニーク端末数)を1時間単位で平日と休日で分けてプロットしたグラフを下記に示します。こちらのグラフは両方共、ランダマイズされていない端末のみの情報をプロットしたものです。(縦軸の実数は割愛)
こちらのDF.sensor は店舗奥に設置してあり、地下街は朝10時開店までシャッターがしまっております。その理由かもしれませんが、平日に関しては、朝通勤時のピークは観測できておらず、お昼休みと夕方帰宅時のピークが観測されました。週末は、平日と全く違う傾向で午後に長いピークがあるのがわかります。
なお、同じ場所における、今度はランダマイズ化された端末のみの傾向を平日と休日でプロットしたものを示します。
若干差はあるものの、ランダマイズされていないグラフとほぼ同等な傾向が示されております。
すなわち、この地下街の人の賑わいの傾向に関しては、ランダマイズ化された Wi-Fiの信号に関してはあまり影響を受けないということがわかります。
他の店舗に設置した DF.sensor の結果も以下に示します。まずはランダマイズなしの平日と週末のプロットです。
前の店舗と違った傾向、平日においては3つのピークが観測されております。こちらでは若干ですが、朝の通勤時のピークが観測されております。この DF.sensor は比較的シャッターの近くに設置してあったので、朝の通勤時の傾向も捉えられることができたのではないかと推測します。
この場所もランダマイズ化された端末のみの平日と休日のプロットを下記に示します。
やはり平日の3つのピークが同様に観測されております。
2つの異なる場所のデータから分かるように、IDのランダマイズ化された Wi-Fi信号に関しては、賑わいの傾向には影響しない場合があるということがわかりました。なお、他の場所で同じような実験をしても同等な結果が得られないこともあります。例えば、滞留が多く観測される場所(待ち合わせポイント、カフェなど長時間滞留するところが多い場所)などは、滞留度合いによって傾向が変化するかもしれません。
また、DF.sensor は Wi-Fi 電波を使っているので、例えばわたしのようにスマホを数台もっていると、その台数分カウントされてしまいますし、Wi-Fi機器をもっていない人はカウントされません。Wi-Fi機器をもっていてもたまたま通り過ぎたとき、Wi-Fiの信号がでていないこともあります。
上記のようなお話しをすると、よく受ける質問に「そんなアバウトな環境で、実態に即した「傾向」が出るのか?」「DF.sensor で捉えている「傾向」とは実際にその場所に訪れた人のどの程度の割合を補足しているか?」というものがあります。
今回、セントラルパーク地下街には、DF.sensor とは別に他の人感センサーが設置されており、この人感センサーと DF.sensor の結果についても比較考察しております。
DF.sensor はいくつか人感センサーが設置している近傍に設置しました。下記グラフを参照ください。
これは、DF.sensorを店舗入口付近に設置できたケースです。日毎の端末カウントになります。ランダマイズなしとランダマイズありを色別で示しております。下のグラフは人感センサーで検出された日別の人数カウントとなります。両方のグラフの相関性は高く、DF.sensor では実態に合った大まかな特徴、傾向を捉えていることが分かります。この場所の実数を日別で比較し、この期間で平均すると、人感センサーで観測された人数の およそ60% が DF.sensor でも検出されたという結果になりました。
一方で、他の場所(店舗入口ではなく、店内商品棚の奥の方)での DF.sensor と人感センサーの比較結果を下記に示します。
同様に2つの計測結果において相関性の高い傾向が出ております。ただし、この場所のケースでは、DF.sensor では人感センサーの約 40% のデータを検出するにとどまりました。
場所によって差はあるものの、セントラルパーク地下街において、Wi-Fi電波による人流計測においても、一定の割合の通行人の傾向を捉えることが可能であると考えられます。
以上、簡単ではありますが、論文内での DF.sensor に関する部分の紹介となります。
「DF.sensor」では、Wi-Fiによる不特定多数の傾向の分析以外にも、BLEビーコンを使った特定のヒト・モノなどのトラッキング・動態管理も対応しております。拡張性の高いセンサーなので、他の IoT連携の可能性も秘めております。お気軽にお問い合わせください。(問い合わせ先: info [at] koozyt.com)
今後ともどうぞよろしくお願い致します。(shio)
PS.
ちなみに、名古屋セントラルパークは、女性向けファッションのお店が多いのですが、実証実験結果でも、キャンペーン参加者の 60% がターゲットとしている女性層という結果でして、関係者一同ほっとしておりました。(本実証実験関係者の 99% は男性なので、関係者ではないですよと。)