【2016.11/3 資生堂銀座にて reported by atsuko】
制作秘話 ~ クロストークレポート ~『真実の鏡』編
資生堂主催、「Link of Life エイジングは未来だ 展」において、クウジットのエンジニアが制作に参加し大好評となったもうひとつの作品は、会場入り口から体験がスタートした「真実の鏡」。こちらは会場でおこなわれた「スペシャル クロストーク」のレポートです!
(撮影: 「Link of Life エイジングは未来だ 展」)
◆スペシャルクロストーク
話し手:
ミヤケマイさん(美術家)
亀田和彦さん(シナプティックデザインズ)
稲葉香織さん(資生堂リサーチセンター)
末吉隆彦(クウジット代表 空実プロデューサー)
聞き手:
平昌子さん(LINK OF LIFE プレス、TAIRA MASAKO PRESS OFFICE)
◆内容
資生堂展示「LINK OF LIFE エイジングは未来だ 展」への出展作品
「真実の鏡」の制作裏話し。
◆『真実の鏡』解説
鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ。白雪姫の継母が鏡に向かって訪ねるように、鏡に見立てたモニターに映っている誰かがあなたに問いかける。感じるままに答えた後、第2のブースで自らが評価される側となる。今度はあなたの姿がモニターに映し出され、誰かがあなたについて評価する。本作では、こうした一連の体験を通して本当の自分と一人歩いしている自分のイメージを繋ぎ合わせることによって、自分とは何かについて問う。「多くの人は、自分の強みを、自分で知らずにいる」と、マネジメントの父ピーター・F・ドラッカーは言う。第三者の客観的な意見の方が案外当たっているのだ。耳の痛いことも褒め言葉も、勇気をもって受けとめよう。けっして、白雪姫の継母のように鏡を壊すのではなく。
11/3開催 スペシャルクロストークより
~ 本作品わたくしatsukoも体験しました。『鏡』にうつったわたしを知らない人がみます。色のイメージ、職業やどんな友だちがいるかまでいくつか想像していただきます。その「印象」の結果は、のちほどその人の「色」からイメージされた「香り」とともにプレゼントしてもらえます。~
ミヤケマイさん
『 エイジングを表現する』
エイジングとういとネガティブな言葉にも聞こえるかもしれませんが、実は、年齢をかさねていくことで他人からみた自分との折りあいもつきやすくなり、生きやすくなっているのではと思いました。そして、このエイジングというテーマをじぶんに照らして考えたとき、他人からみた自分のイメージと自己とのすりあわせの作業ではないかと考え、そこから作品全体のコンセプトを作っていきました。
『色にたとえると?』
「この人を色にたとえると何色ですか?」という質問の回答に、今回は15色を用意しました。作品制作に関わる主だった協力メンバーが15名だったことにも関係しています。資生堂さんには、その色のイメージにあった香りを作ってもらいます。たとえば、「グレー」というイメージをされた人はどんな香りでしょうか。ともするとマイナスに解釈されるかもしれない色ともいえそうですが、日本人にはグレーがとても似合うし、グレーを着る人も多い。なんにでも似合う色ですから「包容力」「信頼感」「つねにそこにいてくれる感じ」というようなポジティブな言葉が連想できます。
『色イメージ~香りへ』
そうした色から想起される人の印象をもとに、香りを作っていってもらいました。商品である香水はみんなに好かれたいものですが、今回の「香り」は、もっと好き嫌いがはっきりでるように作ってもらいました。サンプルの香りに「もっとはっきり赤を表現しちゃってください」というお願いもしていきました。そういえば、体験者さんが着ている服の色と印象には関係がないようでしたね。それも面白い結果でした。赤を着ていたのに「茶色」といわれた末吉さんや、緑をきていたのに「青」といわれたわたし(ミヤケさん)など。
『えらばれた香り』
香りについて面白かったのは、「人から選んでもらったその香り」を好きだという人がほとんどだったこと。ほかの色(の香り)を嗅いでもらっても皆さん「なにか違う」と。他人にあてられた「あなたらしい色と香り」を「気に入る」という結果。他人に「似合うよ!」といって選んでもらえるのは、結構あっているのかもしれない、いいのかもしれない、という面白い結果になりました。
稲葉香織さん
『ふだんとはちがう調香プロセス』
ふだんは香料を開発しているので、色から香りへのマッピングもだいたいのイメージはありましたが、ミヤケさんからの言葉のイメージ(彼岸花みたいな赤とか、森みたいな緑とか)は、私たちの想像を超えていて、その調香プロセスは楽しいものでした。ふだんは、コストなどの条件のなかで香りを作っていますが、香りに何ができるのかという可能性を探ることができました。
亀田和彦さん
『プロデューサーとしてのリンク』
ミヤケマイさんとは大阪梅田の商業施設での作品制作からのチームです。ミヤケさんのコンセプトを、プロデューサーとして実現できる人たちにリンクしていきました。システム全体は、アーケの筒井真人さん、テクノロジーの末吉隆彦さん、机が必要となればエクストレミスさんにつないだり。今回の作品は、日々の気づきを与えてくれるものでした。日ごろ、自分では選ばないものと出会っていくという作品。日ごろは自分の好きなものを選び、自分で自分をキュレーションしてしまっているんですよね。
末吉隆彦
『他人のフィルターを通して自分を見るおもしろさ』
テクノロジー協力の観点では、作品中の笑顔認識技術は、資生堂さんの笑顔講座アプリにも採用されているものです。また、私自身は、慶應SDM研究員でもあり、慶応SDM 幸福学の前野先生との共同研究での知見を活かし、今回は幸福学研究の観点でも作品づくりに参加させていただきました。具体的には、ミヤケマイさんと一緒に、質問票や体験者へのフィードバック(メッセージや色、形、香のリマインダー)を考えていきました。
ミヤケマイさんから初期の段階で、「エイジング=自己受容だと思う。このコンセプトで行きたい。」と話しをいただき、確かに他人から見た自己イメージ、自己一致度を採点することで、自己のメタ認識、自己受容性(を問う、に気づく)につながるような体験デザインが作り出せるかもしれないなと考えました。質問の中の1つには、その人が大事にしているとことは何だと思うか?という質問があるのですが、その選択肢には、前野先生が提唱する幸せの4因子に通じる言葉(1.「自己実現」2.「感謝」3.「楽観」4.「マイペース」)を入れこませてもらいました。自己受容と幸せの第3因子(なんとかなるさ/前向きと楽観)は、関連が深いと言われているのです。質問票の答え、他人から見た自分のイメージとのすりあわせ作業において、自己一致度が高い、低いからよい、悪いはありません、その結果を見て、どう感じるかが重要なわけです。実際に実施してみて、他人のフィルター一枚、ほんとに1人だけでも通すだけで、ふだん自分では意識しない自分のこと、印象がみえるのは面白いですね。
(参考: クウジット、資生堂「笑顔講座」のデジタルコンテンツ化に技術協力
前野隆司(2013)「幸せのメカニズム 実践・幸福学入門」)
クロストークにあたり、皆さん口々に「仲間とのチームワークで制作ができて楽しかった」とお話しされていました。
尚、本レポートはクロストークからの抜粋です。登壇者のみなさんがお話しされた表現とは多少ちがうところがあるかもしれませんがお許しください。
美術作品、美の表現、とコラボしたクウジット。
楽しい試みになりました。
次回の試みも楽しみです!
reported by atsuko.
PS.
クロストークには登壇してない、ミヤケマイと仲間たちチームをご紹介!(by 末吉)
「真実の鏡」作品制作中、BS日テレ「ON & OFF」番組(毎週金曜日23:00-23:30) での、筒井さんへの密着取材が入っておりました。その取材中の一コマ。放送は、12/09(金) とのこと!楽しみです。
先ごろ、こんな特集記事を拝見しました!
その後、資生堂 調香研究のお3方、間中さん、稲場香織さん、松本薫さん(なんと、お2人ともかおりさん!)らは、末吉、宮島がソニーCSL出身ということもあり、会場見学に来てくれていたソニーCSL本條さんとリンク!先日ソニーCSL見学が実現、リンクの輪が広がっている模様。