はじめまして。
今回、このCNETブログの機会をいただきましたクウジット株式会社(Koozyt, Inc.)の末吉隆彦といいます。
私たちクウジットは、「PlaceEngine」という無線LAN電波で位置が分かるロケーションウェアを事業展開しようとしている会社です。
(iPod touch が位置情報を手に入れたらこんなことができるのでは!と思い描いてデモビデオを作ってみました。あくまでデモビデオなので PlaceEngine for iPod touch版はまだ公開されてません。あしからず)
こんないわゆるユビキタスな世界に興味がありますので、この場では、世の中の位置情報サービスの動向をとっかかりに、それらを支える関連技術、新しいビジネスアイデアなど、また日々の仕事の中でおつきあいのある方々との会話の中で、見えてくる今後の面白そうな動きなども交えてご紹介、考察していこうと思っています。(ですが、私の興味は、下記のように位置情報に限ったものではありませんので雑多なエントリーも多くなるかもしれません。)
まずは、自己紹介がてら私の背景と興味をご紹介します。
昨年、クウジットを起業する前までは、ソニー(株)に15年ほど勤めておりました。VAIOノートパソコンの事業部に在籍していた時代が一番長く、1998年に 発売されたVAIO C1というカメラ付きノートパソコンの商品化プロジェクトでは、ソフトウェアプロジェクトリーダーを担当させてもらいました。VAIO C1の商品化でこだわったのは、ミニノートサイズの標準Windowsパソコンという「汎用性」を保つと同時に、カメラ画像認識をはじめとした状況認識能力をコンピュータとして標準で備えたい!という「とんがり」にチャレンジしようと考えたところです。この「汎用性」と「とんがり」の共存にこだわって、初代からシリーズ終了になるまでの VAIO C1(途中、C2やGTなどもありましたが…^^)の開発に取り組んでおりました。
結果的には、当時のカメラ画像認識アプリケーションは、おまけ機能程度にしか提案できなかったかもしれませんが、いまや手の平に入る携帯電話やモバイルCE機器が、10年前のパソコン同等以上のプロセシングパワーと、さまざまな状況認識能力としてのセンサー機能を手に入れました。
さて、もう一方で、当時 VAIO C1商品化のネタ探しをしていた私にとって、今日のクウジット起業につながる重要な出会いがありました。ソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本純一氏(現 東京大学大学院情報学環教授)と実世界指向インターフェイスなる研究領域に出会ったことです。暦本氏の研究で使われていた2次元コードの認識技術と拡張現実感(Augumented Reality)のテクニックを見た瞬間、C1の「とんがり」はこれだ!と直感するや、暦本氏と昼夜議論を重ね、CyberCode(サイバーコード)と名づけ、初代VAIO C1へ標準搭載した経緯があります。
そんな商品化経験から、日常生活の中で、人の五感を拡張したり、人と人とのコミュニケーションを支援してくれるツールとしてのコンピュータの可能性に興味を持ち、そんなコンピュータやモバイル機器を作りたいと考えて、センシングコンピューティングの技術やサービス企画に没頭していきました。
その後、2005年からソニーコンピュータサイエンス研究所に活動の場を移し、「PlaceEngine」のサービス企画とビジネス化を目指して取り組みはじめました。「PlaceEngine」は、やはり暦本氏の実世界指向インターフェイスやアプリケーションの一連の研究成果が元になっています。
2007年には、(勢いあまって!? )ソニー(株)を退職し、PlaceEngine プロジェクトを一緒に推進していたメンバーらとともにクウジットというベンチャーを起業し、日々試行錯誤の中、現在に至ります。
位置情報は、状況を認識するコンピュータという観点では、ひとつのコンテキストに過ぎませんが、携帯電話にGPSが標準搭載され、ヒューマンナビゲーションなどの位置情報サービスが開花してきたように、携帯電話に限らず、さまざまなモバイルCE機器が位置情報依存(ロケーションアウェア)な機能を提供する世界も近い将来現実的なものとなってくると思います。
もちろん技術の進歩のみならず、ユーザーニーズ、社会背景などとマッチしてはじめてヒット商品や新しいライフスタイルは生まれます。センシングコンピューティングの領域は、便利、楽しい側面だけではないでしょう。Big Brother問題に代表されるようなプライバシーやセキュリティの問題についても重要な課題と認識しています。
いずれにせよ、遅ればせながらのベンチャー人生を歩むことになりましたので、本ブログも楽しみながら続けられますよう、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。