前回エントリーにて紹介したとおり、5/12-14に米サンフランシスコにてオライリーメディア社主催の「Where2.0カンファレンス」が開催されました。
□ Where2.0 2008 カンファレンス様子
オライリーによると、今年のWhere2.0カンファレンスに聴講に訪れた参加者は、900人強だったようで、年々規模も拡大しているようです。私もKoozyt社代表として、カンファレンス内の “Where Fair”というイベント内でのデモ展示のため参加してきましたので、今回のエントリーでは、その報告や所感を交えてご紹介します。
開催場所は、サンフランシス国際空港近くのマリオット・ホテルです。
各セッションは、ゲストスピーカーによるプレゼンによる聴講スタイルです。
スポンサー展示は、こんな感じで、セッションの合間に見学します。
Koozytがデモ展示した Where Fairイベントでは、こんな感じの屋台とパネルでデモしました。
□ Where2.0 2008 に参加しての所感
今回、Where2.0に集まる人たちとの出会いや直接の意見交換を通して、大いに刺激を受け、リフレッシュして元気に帰国することができました。Where2.0に集まる参加者の人たちが、実際に何を考えていて、どこに向かおうとしているのか、またWhere2.0的Webサービスにおいてどのようなトピックを中心課題としてとらえているのかなど、あらためて一歩引いた目で、その動向や世界観を確認することができよい機会となりました。
そして 何よりも Koozytデモ展示にふらりと寄ってくれた人たちが、実際に話をしてみると、オライリーWhere2.0主催者はもとより、「Google で MyLocation作ったんだよ」とか、「MicrosoftでVirtual Earthやってます」などなど、実際の開発・ビジネスプロジェクトに携わっている第一線の人たちということもあり、彼らとの質疑応答や意見交換をするなかで、「何より世界に目を向けてチャレンジしないといけない!」と痛感しました。
新しいものを作り出そうとする熱気もさることながら、当事者の人たち自身は、「まだまだ Where2.0 の波(wave) は来ていないので、どうすればmake it happenするだろう?」と試行錯誤、悩んでいる様子や 「Where2.0 から出てきたものをビジネスとしてなんとか成立させたい!それにはどうすればよいだろう?」と皆が熱く情報交換、意見交換し刺激しあい、まさに走りながら考えて実現させていくという強い思いが伝わってきました。
一連のゲストスピーカーのトピックで、感じた大きな流れの1つは、ユーザーインターフェイス領域への話題の変遷です。位置情報や地理空間情報をどうやってユーザーに提示するか。そのようなユーザーインターフェイスの話題を扱うセッションが多くなっているように感じました。もちろん従来の地図上でのデータ視覚化の話題もとりあげられていましたが、今年は、よりユーザーインターフェイス手法の話題、たとえば、3DゲームI/Fを用いたシミューションであったり、写真や映像に情報を埋め込みオーバーレイするAR(Augumented Reality)的な手法が紹介されていたのが印象的でした。Google MapやEarthが登場して、Webサービス間でデータをマッシュアップして、その地図面上でのプッシュピンを話題にして盛り上がっていた時代からわずかの歳月の流れで話題は常に変遷しています。ただ、最先端のユーザーインターフェイス研究やゲーム領域のクオリティに目を向ければ、いまごろそんな話題やってるの?という面もあるでしょう。それら他領域の成果が位置情報Webサービスに融合されてきたという流れだと思います。
また、もう1つの大きなトピックが自己位置プライバシーに関する話題で、ぜひ聞きたいと思っていた Yahoo! BrickhouseのTom Coates氏のセッション。ここでは、氏が登場しただけで会場内は拍手喝采。(人気者なのですね) FireEagleによるロケーションブローカー(Location Brokerage)のコンセプトを説明し、「FireEageは、包括して個人の位置情報、およびプライバシーを(自分で)制御できるところがポイントである。よって、包括的な”purge”機能(自分の居場所を隠してくれる/消去してくれる)を提供できるよ!」 とコメントし、FireEagleによって個別のサービスでの自位置プライバシーに関して気にしなくてよいことをアピール、さまざまな今後の応用事例(現時点では、あったらうれしい的な)をプレゼンしてくれました。今回直接お話したかったのだが機会が得られず、ぜひPlaceEngineのFireEagle対応など意見交換を実現させたいと思っています。
また、 Yahoo! vs. Microsoftをあおっているわけではないですが^^)
Microsoft Vincent Tao氏の「Where is “Where?”」というプレゼンでは、これでもかとたたみかけるようなデモと3D UI表現により、聴講者一同から「MS Virtual Earth がんばってるなぁ!」的な雰囲気に変化し、会場内最後は、拍手となったことも記しておきます。
□いよいよ Koozytデモ展示!
さて念願かなって、Where2.0の地でUSデビューです。
Where Fairイベントでは、CFP(Call for Program)によってあらかじめ応募し、オライリーによって審査されたWhere2.0的新しいロケーションアウェアなソフトやハードをデモ展示することができます。今年は、15個のプロジェクトが採択され、KoozytのPlaceEngineおよび関連アプリケーションは、その中の1つとして参加することができました。
今回は、PlaceEngine技術を利用したアプリケーション例として、「Location Amplifier for Tokyo Train」(日本語名: ロケーション・アンプ for 山手線)というデモ作品を IAMAS教授であり音楽や映像を使ったメディアアーティストとして知られる赤松正行氏と組んでKoozyt初となるアーティスト・コラボレーションを実現させ、それを目玉に出展してきました。
赤松氏とのコラボレーションについて:
赤松氏との共同作業は、非常にタイトなスケジュールの中、しかも連休中の遠隔地(岐阜と東京)での作業として行われ、ある意味とても刺激的なものとなりました。(赤松氏との出会いは、実はVAIO C1開発の10年以上前にさかのぼるのですが…今回のコラボの経緯を話しだすと長くなってしまうので別途機会があるときに譲るとして)私たちKoozytは、PlaceEngineと加速度センサーを組み合わせて利用する電車マッチングプログラム(走行中の電車を路線にマッチさせ、電車の走行方向、次の駅までの距離、電車の加速、減速などのセンシング)の実現に取り組んで追い込みをかけておりました。まだまだフィールドテスト自体も山手線限定ですし、加速度センサーの取り扱いにも個体差があり問題点も多いことが分かってますが、今後モニターユーザーを募って実際に使ってもらいたいなと画策しております。
さてUSでの反響やいかに?位置情報サービスの専門家集団が参加するカンファレンスなだけに、この東京での電車シナリオとユースケースがウケるのか?はたして理解してもらえるのだろうか?
蓋を開けてみると、Where2.0に参加する方々だけあって、東京に出張している人たちも多く、みな一様に、「東京の電車は難しいよね。」「どこで降りてよいか分からないし、なるほど乗り過ごし防止に使えるのね!」「来月出張するから、すぐ公開してくれ!」というような好フィードバック。外国人ツーリスト向けの東京は山手線での乗り過ごし防止アラーム機能と駅情報のタイムリーな表示。そして赤松氏の環状線である山手線を iPodスクロールホイールのような円盤デザインに見立てたウィット。(これは後で聞いたら偶然だそうですが^^)それら1つ1つが分かりやすく伝わった感を受けました。
デモ展示の様子を「ロケーション・アンプ for 山手線」Where2.0デモCTO奮闘編として公開してますのでぜひごらんください。
□ Koozyt CTO奮闘編
今回のWhere2.0カンファレンスには、Koozyt CTOの塩野崎と私の2名で出張してきました。ちょうどよい機会なので紹介すると、彼と私とは大学研究室時代からの同期で、2005-2007の間は、ソニーCSLでの同僚でもあったのですが、それまではまったく仕事では関係なく、単なる飲み友達。PlaceEngineプロジェクトを通じで、何の縁か、お互い40超えてのベンチャー立ち上げのダイナミックな毎日です。で、彼は、米ニューヨークからの帰国子女なので、私は、彼を CEO (Chief English Officer)と呼んでいるくらい心強い存在なのです(笑)
ゲストスピーカー陣での記念撮影:Koozyt CTOのDr. Atsushi Shionozakiは、左から4人目。 写真中央の O’Reillyの Brady Forrest氏(Where2.0主催者)、Googleの Adel Youssef氏 (MyLocation作者)は、Koozytビデオの「Where2.0デモ:CTO奮闘編」にも登場しています。
Eye-Fi社 CEO, Yuval Koren氏と語る Koozyt CTO
Skyhook Wireless社 VP, Jed Rice氏と語る Koozyt CTO
Koozyt CTOコメントとしては:
「Where2.0は、開発者コミュニティが重要視されていて、とても支援されている雰囲気を受けた。みんな django/python 好きみたいだ!」
□ 国内からの参加者との出会い、そして外村氏からの激励メッセージ
日本からのカンファレンス参加の方々とも現地でお会いし、情報交換することができました。直接お会いできたのは、10数名程度の方々でしょうか。デモ展示が終了した夜には、ソニーCSL時代より懇意にさせてもらっているヤフージャパン(アルプスラボ)二宮氏らと近くのレストランで夕食、楽しくディープな位置情報系トークに花をさかせることができました。
また、二宮氏から紹介いただいたオークニーの森氏と立ち話程度でしたが今回のGoogleの発表(ESRIとの提携やGeoコンテンツへの検索APIオープン化など)についてGIS業界とWhere2.0的な流れの俯瞰的なコメントをいただき、実際にこれまで地図・GIS業界で走られてきた経験を踏まえたお言葉だけに興味深かったです。 それから、ONGMAPの作者である直島氏。氏は、リクルート/サン・マイクロシステムズのMash up Award 3rdの最優秀賞を受賞されており、その際の懇親会で知り合ってもよかったはずなのですが、実際には前回のブログエントリーのトラックバックがご縁でコンタクトとりあい、現地で合流することができました。皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
今回、うれしかったのが、Koozytのデモ展示の元気な感じが皆さんにも伝わってくれたようで、来年は展示側にぜひまわりたい!と意欲を語ってくれた方もちらほら現れたことです。国内大手もベンチャーも Where2.0の動向を見きわめている最中かと思いますが、「走りながら考える!間違ったと思ったら修正する」がWhere2.0的思想ですから、まずは参加、今後盛り上がってくれるとよいなと思います。
5/14昼には、シリコンバレーを拠点に活動されている外村氏(First Compass Group, LLC.)とお会いし、ランチをご一緒にしながら意見交換
「Where.2.0ではじめて日本企業が出てきて情報発信したのは評価するが、世界に通じるベンチャー目指してるなら、失敗を恐れず、もっともっと動きを早く加速して、サポーターと一緒になって世界に出よう!」
ということで最後に
「国産ベンチャーよ!シリコンバレーに、世界に行こう!」
という激励メッセージをいただき、元へと返して、今回のWhere2.0出展でのUS出張は、現地での人々との出会いや意見交換を介して、大いなる刺激を受け、日々試行錯誤するしか道はないことを再認識、時差ぼけも何のその皆さんから元気をもらって、リフレッシュして元気に帰国してまいりました。2