11/13-14 でInfinity Ventures Summit (IVS)2008 Fall@宮崎に参加してきました。
前回のIVS2008 Spring@札幌では、Launch Padに出場させていただき、惜しくも2位の結果でしたが、今回は、位置情報に関するセッションでの講演/パネルを担当させていただきました。
韓国Daum のLimさん(左)は、韓国の地図サービスの動向やDaumが手がけているストリートビュー相当のサービスについて、食べログの村上さん(右)は、食べログでの位置情報関連の取組み(API提供や、位置連動広告、iPhoneアプリ提供など)について、そして、私は、PlaceEngine、およびアッカ・ワイヤレスさんと横浜で実施した一連の「ロケーション・アンプ for 横浜」サービスの事例について紹介しました。また、近年の位置情報Webサービス関連の盛り上がり、Where2.0や国内ジオメディアサミット(GMS)の方々の取組みにもコメント。(※上記写真撮影いただいたゴーガ 小山さん感謝です)
さて、宮崎と言えば、東国原知事。ということで、初日は、知事の講演があると聞いて、楽しみにしていました。私自身は、地域活性化の観点から「皆さん、地元の人に一言ほめて、声かけて帰っていってください。『ゴミがないですね』『ごはんがおいしいですね』『きれいですね(渋谷のおねぇちゃんよりも(笑)』そうすると、本当にきれいになっていくんですよ。声かけは、地域活性のささやかな一歩、それでいて経験的にも本当にそうじゃないかなと思うんです。」というようなコメントが記憶に残りました。もちろん、ITベンチャー企業関連の人々の集まりですから、宮崎へのIT企業誘致のアピールをしっかりされつつ、なんとも楽しく、聴衆を飽きさせない弾丸トークでした。
さて、2日目には、私自身もともと興味のあった拡張現実(Augumented Reality: AR)の動向に関する個別セッションに参加したので、その内容と、思ったことをつらつらと書き記したいと思います。
まずは、慶應メディアデザイン稲見先生より、電脳コイルの話に始まり、一連のAR研究の流れについての俯瞰説明がされました。
- 電脳コイルの紹介
- 東大/ソニーCSL/Koozytの暦本さんのサイバーコード
- ARToolkit の登場と一連の応用事例
- 稲見先生の一連の研究成果
- Oxford大での最新研究(Parallel Tracking and Mapping)
そして、最後に、「ARの要素技術は国内にそろっている!関連研究者やその成果も世界レベル」というコメントが力強かったです。
その後、それを受けて、ベンチャービジネス領域で、AR手法を取り入れて、もしくはARに一家言あるメンバーの議論が繰り広げられました。
記憶に残ったコメントは:
- 「ARは、というか電脳コイル的世界観は、新しいパラダイムのプラットフォームである!」(サルガッソー 鈴木さん)
- 「要素技術は何であってもかまわない。それをおもしろ、おかしくパッケージすることがやりたい。」(芸者東京エンターテインメント 田中さん、電脳フィギュアARis(アリス)は、LaunchPadでも2位に!)
- 「ビジネスとして回る事がまず大事。そうしたら、次のR&Dへ投資してバージョンを重ねて、発展させることができる。」(UEI 清水さん)
一連の経験談やコメントを聞き、ますますARに限らず研究・開発とビジネスが直結してきたと実感。
IVS2008Fallに先立って、ここ最近でも、ARのキーワードつながりで、さまざまな方々と直接お会いし意見交換する機会を得ました。11/1号の日経コミュニケーションでAR特集を記事化された武部記者は、一連のAR系ネタの取材話など、Sekai Camera頓知・の井口さんとは、IAMAS 赤松さんつながりで何度かお会いする機会もあり、また、Mashup Award 4thで「クウジット賞」受賞の「Fallen(ファレン)」の作者である金村さんは、座談会で「実用的なAR作品を作りたい!」と意気込みを語ってくれました。クウジット賞を「Fallen」に決めたきっかけは、正にそのアプローチにポテンシャルを感じたからです。今は粗削りでも今後実用的になっていくであろうAR技術に、PlaceEngineを組み合わせてくれたことが決め手となりました。
私自身、ちょうど10年前にVAIO C1を開発していたときに、AR手法を取り入れた一連のカメラ画像認識アプリケーションの開発指揮をしていたため、非常になじみ深い領域ですが、まさに10年ひと昔、研究領域から実用化、ビジネス領域へのシフトタイミングなのだと感じてます。
ところで、芸者東京の田中さんは、セッションの中で、音による拡張現実の効果についても言及
- 「ロッキーのテーマを聞きながら走ると主人公さながら気分も高揚する!」
- 「自分がかっこいいこと言ったら『ポーン』と背後でNHKプロフェッショナルみたいな効果音鳴らしてほしいなぁ」
- 「Walkmanが最初のAR機器なのちゃうん?」
ここで思い出したのが、ソニーCSL時代に隣部屋だった通称”みやぢ”こと、宮島さん(もっと以前からの縁もあるのだが、その話はまたいずれかで)の研究ネタ。彼は、MMG(Music Mosaic Generator)という音楽のマッシュアップエンジンを開発しているが、隣部屋で、「ドラえもんの『ムード盛り上げ楽団』を作りたいんだ!」という話をずっとしてました。その場の気分によって、BGMを演奏してくれるような仕組みに発展していくと、まさに、ランニング中のロッキーのテーマ音楽のような効果になっていくのだと思います。音による強化現実は、以前のエントリーでも触れましたが、暦本さんも歌舞伎座に訪れたときにはじめて体験した歌舞伎ガイドシステムなるイヤホンガイドが実世界指向UIの研究領域に自らを誘う気づきの原体験だったと述べています。
奇しくも、IVS2008 FallのLaunchPad優勝は、Yamaha Y2プロジェクトの皆さんの結婚式にあわせたBGM自動作成「Kang Kong Song Maker」でした。まさに、「ムード盛り上げ楽団」の要素技術なのでは?
そしてそして、Y2プロジェクトの皆さんとご挨拶したときに最初に言われたのが、「宮島さんと一昨日飲んでました(笑)」
リアルに拡張された現実、つながってる?
場所x音ネタは、ぜひ実現したいものです。
視覚による現実世界と情報オブジェクトのオーバーレイ手法、そして、その場に合わせた音楽/音声による強化現実、これらのハイブリッドによるインタラクションの手法、背後にある技術の存在を意識せずに、身近な携帯機器でARアプリケーションが実用化される日が近いのかもしれません。その際の、場所や空間のセンシング技術もさまざまな要素技術を組み合わせたハイブリッド測位になっていくでしょう。関連業界では、『シームレス測位』というキーワードで議論がはじまっていますが、これはまたの機会に。
おわりに、今回のIVS参加では、他のベンチャー経営の方々の「(不況を)チャンスに変えていこう!」「何が何でもサバイブするぞ!」「何でもやってやるぞ!」という力強さと元気をもらい、新しい出会いに感謝するとともに、帰途につきました。