【CNET BLOG転載】夏なので「妖怪x位置情報」について

突然ですが、夏なので、「妖怪x位置情報」について語ります。

先日、ARセミナーで講師で呼ばれた際に、その最後に「ほとんど私の趣味から始まったプロジェクトなんですが…Koozytで妖怪に関するiPhoneアプリを作りましてね…妖怪は立派な位置情報なんです!」というお話をしました。その後、そのセミナーに参加されていたヒマナイヌの川井さんがすぐに食いついてきまして、川井さんが主催している少人数制の”寺子屋ヒマナイヌ”で「位置情報と妖怪」について講演してほしいというご依頼をいただき、去る7/29に 寺子屋ヒマナイヌ12「大江戸妖怪集〜位置情報テクノロジーと妖怪の親和性」が開催されました。
#ヒマナイヌの川井さんとは、10年ほど前に、スカパーにVaioチャネルという局があったのですが、川井さんが当時ディレクターを務める番組で、末吉がVAIO C1やCyberCodeを紹介して出演して以来のつながりです。

さて、遠野物語で知られる柳田国男の『妖怪談義』の中に出てくる妖怪の特徴、定義によれば:

?出没する対象が不特定多数であること
?出没する時刻が夕方(黄昏・逢魔ケ時(おうまがどき))であること
?出没する場所が特定されていること

これによると、妖怪は、相手を選んで出没するわけではなく、対象が不特定(一方、幽霊は、特定の誰かを恨んで出てくる)、だいたい出没時間は、夕方など昼と夜の境、はざまの時間の薄明かりです。幽霊は、草木も眠る丑三つ時と言われる深夜ですから、妖怪は、そもそもが出たがりなわけです。そして、妖怪は、出没する場所がだいたい一定している。のだそうです。

ということで、妖怪は、とても立派な位置情報コンテンツと考えたわけです!

そんな話を民俗学者の久保田裕道先生(民間信仰や民俗芸能の研究が専門)と意見交換しながら、現代のデジタルガジェットならではの妖怪伝承をコンセプトにiPhoneアプリを実現できないだろうかと考え、実現したのが「大江戸妖怪集」iPhoneアプリです。

#久保田先生とは、地域イベントで知り合いました。そのイベントでは、お互いモンスターやお化けの仮装をして、毎年地域の子供たちを楽しませていましたので、今回、ご一緒にお仕事するまで、お互いの素顔をあまりよく知らないままだったのも面白いご縁です。

 地域イベントで子供たちにお菓子を配る久保田先生(左)

ちょうど「大江戸妖怪集」の特徴である位置連動機能について、ジェット☆ダイスケさんのビデオブログでよくまとまっているのでご覧ください。

大江戸妖怪集 iPhoneアプリ 位置情報により大江戸線の各駅で妖怪を召還

私は、毎日通勤で大江戸線を利用しているのですが、大江戸線って、地下4Fも5Fもの深さがあるんですよね。地下深くて、電車に乗るまで結構歩きます。東京は大江戸の地下深く走る大江戸線。その頭上には、その昔、江戸の町に妖怪たちが現れうごめいていたと考えると、なんとも雰囲気がありませんか?

現在位置に連動した妖怪伝承を通して、時間軸を超え、新しい発見や気づき、東京は大江戸をより身近に感じられないだろうか?早速、久保田先生に、「位置連動の妖怪伝承をデジタルガジェットで!」というコンセプトを伝え、大江戸線各駅の近くにゆかりのある妖怪の選定にとりかかっていただきました。(当初は、先生からそんなに都合よくゆかりの妖怪が見つかるかしら?とコメントもらいましたが)

さて、大江戸妖怪集に収録されている妖怪を(無理やり)分類してみると:

■自然系
– 竜巻のような自然現象
– 霊亀や化け椿のような突然変異的な生物
– そもそも存在自体が霊的にみえる蛇
– 河童や天狗とか想像上もしくはUMA系
■超自然系
– 変化(へんげ)系(ex. 狐やタヌキが化けた、石の彫り物が化けた)
– 怪談話系(ex. 柄杓を持つ手が出てきて水を入れる, 船の魂にとりつかれる, 数万の赤子がお寺の中で泣いている, ありがたい神仏が歩いた…)

これらの妖怪キャラに関するデザイン制作については、森岡淳さんに協力いただきました。久保田先生は、ドラフトであがってくる森岡さんの妖怪デザインについていろいろつっこみ、コメントを入れてくれたのですが、面白いエピソードを1つ紹介します。

「妖怪たちは、ビジュアル化されないうちは、ただの怪異現象に留まっていたりするのですが、ビジュアル化されることによって、多くの人々がイメージを共有化し、妖怪としての地位を確立してゆくことになるわけです。江戸時代にも妖怪絵師たちがいて、彼らの描いたビジュアルがあったからこそ、現代の私たちも、それを妖怪として認知できるわけですね。例えば「船幽霊」は普通は水の中から出てくるわけですが、この大江戸妖怪集では幽霊自らタライに乗っています。最初はちょっと変かなと思ったのですが、ビジュアル的にはその方がよいということをデザイナーさんから聞いて、それもありかなと思いました。100年後には、もしかしたら隅田川の船幽霊は皆、タライに乗っていることになっているかもしれませんね。」(久保田先生)

また、「大江戸妖怪集」に登場する妖怪が出没した場所のTOP3を集計すると:

  1. 神社仏閣
  2. 水に関わる場所(川や池や用水など)

となります。

「神社や寺は神仏がいるので同類だからなんとなく理解できますが、水と坂というのは注目できます。そうした場所に何らかの「力」が宿っていたということが言えるのかもしれません。しかし、都市化が進む中で多くの池や川は埋め立てられ、坂もまた車や電車に乗っていると、その存在すら忘れられつつあります。今回、この「PlaceEngine」を用いることで、そうした忘れられていた場所の力を、妖怪を通してもう一度思い出すことができたら、と思うのです。」(久保田先生)

さてさて、通勤時間や日常生活の合間にでも、妖怪たちを iPhone/iPod touch上に召喚し、その物語を知ることで、場所と時間の感覚をより一層リアルに五感で感じてみてはいかがでしょうか?そのとき、妖怪たちは、新たな形態として伝承され続けていくのかもしれません。 夏のひとときの一興になればと。

大江戸にあらわる妖怪たちをお楽しみください。

[youtube=7LYTRd9U9Xk]

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