みなさま、こんにちは!
今日は先週末開催されたアイデアソンの様子をご報告します。
アイデアソンイベント実施の背景
3/11(土)、12(日)の二日間、上野の東京国立博物館で初の『トーハク x アイデアソン』が開催されました。主催は、東京国立博物館、ISID、クウジットの3社。3社により2013年より発足推進してきた『トーハクなび共同研究プロジェクト*』活動の一環で実現しました。
共同研究プロジェクトでは、これまで総合文化展公式ガイド「トーハクなび」アプリや、タブレット貸出によるスクールプログラム「学校版 トーハクなび」などの企画開発運用などを手掛けてきました。今回、共同研究プロジェクトの目的である「ICTを活用することで、東京国立博物館総合文化展における来館者の鑑賞体験をより豊かにすること」の核はそのままに、2020年にむけ増加する訪日外国人観光客への取り組みをアイデアソンという形態にて、よりオープンにアイデアを創出して、次の展開を模索していこうと企画されました。
アイデアソン1日目
1. 3月11日(土)~オリエンテーション
参加者は一般公募にて募ったICTクリエイター(エンジニア、デザイナー、プランナー)と日本在住の外国人。事務局もおどろくほど多数の応募があり、選考会をへて選ばれた29名の方にご参加いただきました。会場では5~6名からなる5つのチームを編成。チーム名はそれぞれ「等伯」「永徳」「光琳」「乾山」「大雅」と命名されました。
初日は朝10時にスタート。チーム作業に入るまえには、東京国立博物館 副館長の松本伸之さん、ISIDイノラボ チーフプロデューサーの森田浩史さんの挨拶につづき、東京国立博物館 教育課課長 小林牧さんより「トーハクの歴史やミッション」「アイデアソン開催趣旨・テーマ」「トーハクの現状」についてオリエンテーションが行われました。司会進行はクウジット代表の末吉隆彦です。
今回のテーマは「訪日外国人の記憶に残る日本文化体験」を考えること。副題は「ICTは博物館で何ができるか?」です。ファシリテーターは、佐藤尚之(さとなお)さん。
2. 3月11日(土)~館内ツアーへ
その後、参加者の皆さんもチームにわかれて、チームごとに「トーハクスタッフによる館内ツアー」へと出かけていきました。まずは、平成館の大講堂へ!二日目に各チームがプレゼンテーションを行う会場です。同時通訳設備や映写室も備えられている立派な講堂でした。審査員向けのみならず、この大講堂で一般来場客の前でプレゼンテーションを行う予定になっています。どきどき。
そして、約80分の本館ツアー。作品の背景などを教えてもらいながら「アイデアの芽」を探していきます。
展示作品とトーハクスタッフの皆さんの深い知識に感激しながら本館を廻り、また「ゆっくり来たい」と思いました。もしかしたら一生に一度しか来られないかもしれない「海外からのお客さま」にどうしたら満足していただけるのかを想像しながら歩きました。
アイデアのターゲットは「訪日外国人」。場所は日本美術のある「本館」、そして「ICTを使ったアイデア」であること。ちなみに、小林さんのお話しによると日本美術を楽しむために知っておくとよいツボは「1.季節を愉しむ心」「2.暮らしの中で使われたもの」「3.細部の美しさや精密な作り」「4.仏教の美術」ということでした。
3. 3月11日(土)~アイデアソンスタート!
本館ツアーから戻ったあとは、さとなおさんから「テーマの捉え方」や「アイデア出しのコツ」を伝授していただきました。さとなおさん曰く「Needs, Seeds、が大切。オススメはまずはNeedsをたくさん探ること。出てきたアイデアに固執してしまったりアイデアが先行してしまうと他のアイデアが出にくくなることがある。自分の(海外での)体験などを集中して思い出したり、来館者のインタビュービデオなども参考にしながら訪日外国人の方の気持ちを一生懸命想像してみるところから始めてみましょう」(※若干意訳あり)ということでした。
ランチタイムのあとは、いよいよアイデアソンのスタートです!
この日は東日本大震災発生から6年目の日でもありました。休憩をはさみ、皆であらためて集合。14:46 に一同で黙祷を捧げました。さとなおさんからは自らの震災支援・復興に関する活動とアイデア創出と実践についてもお話しいただきました。
そして、一日目も終盤へ。
さとなおさんが各チームのアドバイスに周っていきます。グループでの議論がはじまってから約4時間。走りつづけて溢れ出るアイデアは泉のごとし。白板はアイデアでいっぱいになりました。種をみつけて、道を決め、案としてまとめていく皆さんの熱量はみっちりと濃く、一瞬の時も惜しむように議論が重ねられていました。
番外編。そんな熱い空気のなか、ひとりコツコツとアイデアをカタチにしていく小さな参加者もいました。
こうして18時には一日目が終了。翌日は企画のまとめと発表準備からスタートです!
アイデアソン2日目
4. 3月12日(日)~発表準備
二日目。9時半に集合して最終プレゼン準備のスタートです!各チームそれぞれのまとめ方で資料作りに入りました。
そして午前中にしっかり資料をまとめあげ、ランチをすませていよいよプレゼンテーション会場へむかいます!!
5. 3月12日(日)~プレゼンテーション@平成館 大講堂
平成館の大講堂。12時開場。勢いよく会場めざしていらっしゃる聴講者の方、今日は何かあるんですかと興味を持ってくださる方、発表者のご家族らしき方などなど続々と集まっていきました。
6. 3月12日(日)~プレゼンテーション スタート!
1チームの持ち時間は15分です。緊張している間はありませんが、どうやら皆さん緊張とは無縁のご様子。なんとも堂々としたプレゼンっぷりです。
「ICTでできること」が一つのテーマでしたので、各チーム技術要素をもりこんだアイデアが発表されました。MR(Mixed Reality)、ビーコン、AR(Augmented Reality)、3Dスキャン、プロジェクションマッピング、ビックデータの活用など、という具合。そして、なんと「博物館来場者の鑑賞場面はこんなふうに変わります」という寸劇交えてのプレゼンテーションも続々と登場!皆さん、緊張どころかステージを存分に楽しんでいるようでした。
7. 3月12日(日)~審査員
さて。この日は審査してくださる方々も魅力の一つでした。外国人目線で審査をしてくださるのはサッシャさん(ラジオDJでフリーアナウンサー)。課題となっている「本館」が日本美術展示であることから日本美術視点で見てくださる橋本麻里さん(ライター、エディター、永青文庫副館長)。技術視点での講評は暦本純一さん(東京大学情報学環教授、ソニーCSL副所長)、そして、東博の松本伸之副館長です。ファシリテーターの佐藤尚之(さとなお)さんはひきつづき進行を務めてくださいました。
8. 3月12日(日)~結果発表!
5チームのプレゼンテーションがおわり、30分の休憩時間。その間に舞台裏で審査が行われました。そして、発表。
各チームのアイデアの詳細は、後日、主催する3社からの報告書を公開予定ですので、楽しみにお待ちください。 優勝された等伯チームにはトーハクの「年間パスポート」、特別賞の光琳チームには総合企画展の年間パス「ベーシック」が授与されました。
その後も、ファシリテータのさとなおさん、審査員のみなさんによる、トーハクの未来について、熱いトークショーが繰り広げられました。
二日間、朝早くから日没まで長いようであっという間の濃いひと時。
「トーハクなび共同研究プロジェクト」としても、今回のアイデアソンの経験をどのように生かしていけるのか、また多くのみなさんと一緒に、トーハクの未来について考える機会をぜひ持てればと思います。ご参加いただいた方々、そして聴講された来場者の方々、関係者のみなさん、刺激的な二日間をありがとうございました!心より感謝いたします。
【reported by atsuko】
#『トーハクなび共同研究プロジェクト』とは
位置情報などIT技術の活用により、東京国立博物館総合文化展における来館者の鑑賞体験をより豊かにすることを目的に東京国立博物館、株式会社電通国際情報サービス(ISID)、クウジット株式会社の3社で発足したプロジェクトです。「トーハクなび」は最初のステップで生まれた東京国立博物館 総合文化展の見学コースを紹介するガイドアプリケーション。現在も活躍中のアプリで、お手元のスマートフォンやタブレットで利用が可能です。